粘膜上皮細胞間のタイト結合は粘膜バリアを形成し、物質の上皮間の移動のほかに、微生物の組織内侵入を阻止すると考えられる。クローディン分子はタイト結合に寄与する分子である。ニワトリ卵管の膣部、子宮部および峡部のクローディン発現の産卵期と休産期の差、これの発現制御に対するエストロジェンの役割を追究した。その結果、クローディン1,3,5の発現は、いずれも産卵期よりストレスが働いた休産期で減少し、エストラジオールで高まった。また、TNFα用サイトカインの転写因子であるLITAFとIFNγの遺伝子発現は産卵鶏より休産鶏で高く、これらがタイト結合の脆弱化をもたらす要因の1つと考えられた。FITCデキストランの上皮細胞間への浸透の解析からも、休産鶏の上皮間透過性が高まっていることが示唆された。次に、微生物のDNAに保存されているモチーフのCpG-ODNが培養膣部細胞のトリbetaディフェンシン(AvBD)産生に及ぼす影響を追究した。CpG-ODN刺激は炎症性サイトカインのIL1βとIL6の発現を増加させたが、AvBDの発現には影響しなかった。次に、IL1βとIL6が膣部細胞のAvBD発現に影響する可能性を検討した。培養細胞はIL1βとIL6の受容体発現を発現していた。細胞をIL1βまたはIL6で刺激したところ、IL1βにより5種のAvBDのうちAvBD1と3の発現が増加した。IL6はいずれのAvBDの発現にも影響しなかった。この結果から、CpG-ODNはAvBD発現にはしないが、これによって産生されるIL1βはAvBD1と3の発現を増加させるものと考えられた。
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