研究課題/領域番号 |
21380175
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研究機関 | 独立行政法人農業生物資源研究所 |
研究代表者 |
金子 浩之 独立行政法人農業生物資源研究所, 生殖機構研究ユニット, 上級研究員 (60343993)
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研究分担者 |
菊地 和弘 独立行政法人農業生物資源研究所, 生殖機構研究ユニット, 上級研究員 (20360456)
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キーワード | 応用動物 / 発生・分化 / 発生工学 / 原始卵胞卵 / 超低温保存 / ガラス化 / 異種間移植 / 卵発生能 |
研究概要 |
超低温保存は原始卵胞卵の利用性を向上させる。そこで、原始卵胞卵のガラス化冷却条件、および超低温保存後の原始卵胞卵の生存性および発生能について検討した。生後20日齢の原始卵胞より構成されるブタ卵巣を1mm角に細切し、エチレングリコール等を含んだガラス化液に45秒、7分、および15分間浸漬させた後、液体窒素上に浮かべたアルミホイルの上で超急速に冷却した。固化(ガラス化)した卵巣小片を液体窒素内に保存した。超低温保存した原始卵胞卵の生存性を正確に解析するために、卵巣小片を免疫不全マウスに移植し、卵胞の形態的・機能的発育および卵の発生能を解析した。胞状卵胞の発育を示すマウスの膣開口率は45秒区では43.5%(10/23匹)、7分区では42.9%(9/21匹)、および15分区では33.3%(7/21匹)であった。45秒区では8匹のマウスから直径115μm以上のフルサイズに達した卵が59個、7分区では7匹のマウスからフルサイズ卵が38個回収されたのに対し、15分区では1匹のマウスから変性卵が1個のみ回収された。体外培養後、45秒区では33.9%(20/59個)のフルサイズ卵が成熟し、そのうち84.2%(16/19個)が受精した。一方、7分区では50%(19/38個)のフルサイズ卵が成熟し、そのうち78.9%(15/19個)が受精した。15分区の変性卵の体外培養は実施しなかった。卵胞の発育状況のマーカーとして、膣が開口したマウスの末梢血中インヒビン濃度を測定すると、45秒区では10.5±1.4ng/mlおよび7分区では9.2±1.4ng/mlであったが、15分区では1.5±0.3ng/mlと明らかな低値を示した。以上の結果から、卵巣組織をガラス化液に45秒から7分間浸漬し冷却した場合には、原始卵胞はヌードマウスに移植することで胞状卵胞へと発育し、さらにそこに含まれる卵が成熟能および受精能を有することが明らかとなった。一方、15分間ガラス化に浸漬した場合には、卵胞の発育が著しく阻害され、ガラス化液の毒性の影響が窺われた。
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