筋肉量や脂肪蓄積を制御する成長因子・ミオスタチンが細胞外マトリックス分子の一つであるデコリンによってどのように制御されているかを検討した結果、以下の成果を得た。 1.デコリンが筋細胞に対するミオスタチンの抑制効果に及ぼす影響 細胞外マトリックス(ECM)成分のデコリンによるミオスタチン調節機構を解明することを目的に、デコリン過剰発現筋細胞を作製し、これに対してミオスタチンを添加したところ、ミオスタチンによる増殖抑制効果は、コントロール筋細胞に比べて低く抑えられていた。また、同様にミオスタチンによる分化抑制効果について検討した結果、デコリン過剰発現筋細胞はコントロール筋細胞に比べて、ミオスタチンの分化抑制程度が低かった。以上の結果は、筋細胞自らが産生するデコリンがミオスタチンの増殖・抑制作用を減ずる働きをしていることを示唆している。 2.脂肪細胞に対するミオスタチンの作用およびデコリンによるその調節作用 ブタ脂肪前駆細胞株(PSPA)を用いて脂肪前駆細胞に対するミオスタチンの作用を検討した結果、ミオスタチンはPSAPの分化を抑制することが示された。PSPAに対するミオスタチンの分化抑制効果は、デコリンを含むコラーゲンゲル中でPSPAを培養した場合には減少する傾向がみられた。このことは、ミオスタチンの脂肪前駆細胞に対する作用が細胞外マトリックスのデコリンによって調節されている可能性を示唆するものである。 3.線維芽細胞におけるデコリン産生能に及ぼすミオスタチンの影響線維芽細胞に対するミオスタチンの影響について検討した結果、ミオスタチンは線維芽細胞の増殖を抑制した。線維芽細胞の細胞表面にはミオスタチン受容体ActRIIBが発現しており、ミオスタインによる増殖抑制時にはp21の発現亢進がみられた。さらに、ミオスタインが線維芽細胞のECM産生能に及ぼす影響を検討した結果、ミオスタチンはデコリンを含むいくつかのECM分子の発現を亢進することが明らかになった。
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