研究課題
本年度は(1)GFP-TGマウス骨髄移植マウスを用いた消化管細胞壁の免疫応答の中心をなす常在型マクロファージの寿命や炎症動態解析、(2)細胞壁表層の新たな免疫担当細胞としての奨膜中皮細胞の細胞特性解析、ならびに、(3)これら上記の細胞群が重要な役割を果たすと考えられる術後腸麻痺(POI)モデルの病態機構と5-HT4受容体作動薬によるPOI抑制機構解析を行った。(1)においては消化管壁内神経叢に分布する常在型マクロファージの寿命が10から14日であるのに対して、奨膜常在型マクロファージは4-6ヶ月に渡って生息し、両者がきわめて異なる周期でターンオーバーしていることを見いだした。さらに、POIモデルにおいて炎症応答が惹起されると、α-ブンガロトキシン親和性の新しい常在型マクロファージサブセットが出現することを見いだした。この受容体はα7nACh受容体と考えられた。(2)においては、ラットおよびマウスより奨膜中皮細胞を単離培養することに成功し、ビメンチン、ケラチン5、メソセリン陽性の中皮細胞であることを確認すると共に、これらの細胞がLPS刺激に反応してMCP-1、IL-1β、TNF-α、iNOSなどの炎症メディエーターを発現することを見いだした。さらに、生理的状態ではIL-10を発現することで抗炎症方向にこの細胞が機能していることが形態学的解析によって示唆したが、IL-10KOマウスを用いた解析では現段階では十分な知見を得ることが出来ず、今後の課題となった。(3)については、POIモデルにおいて奨膜中皮細胞が障害を受け、消化管壁のマクロファージが活性化されてNOを産生し、消化管運動障害をもたらすこと、5-HT4作動薬が消化管機能回復能を持つだけでなく、マクロファージのα7nACh受容体を介した抗炎症作用を持つことを明らかにした。中皮細胞障害とマクロファージの活性化を繋ぐ機構や、マクロファージや中皮細胞でのα7nACh受容体の病態生理機能については、次年度にさらに詳細な解析を加える予定である。
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