研究課題
本研究は消化管炎症を管腔外からの刺激と管腔内からの刺激に分けて考えた時、管腔外からの侵襲に対しては消化管を包む奨膜中皮細胞が最初の免疫炎症応答の砦であり、消化管壁深層へと免疫炎症応答を伝授するKeyとなる細胞であると考え、いまだ、明らかではない消化管壁に存在する新たな知覚・免疫応答の機能を果たす奨膜中皮細胞の細胞生理機能と腹膜炎や手術後腸麻痺での病態生理学的役割の一端を解明しようとするものである。最終年度の研究成果として、腹腔内の奨膜あるいは腹壁を覆う中皮細胞機能についてさらに下記の点を明らかにした。初代培養奨膜中皮細胞において、(1)エンドトキシンを受容するTLR4受容体が発現していること、(2)リガンドであるLPS刺激により短時間にしかも一過性にCOX-2誘導が生じ、プロスタグランジン類が産生されること、(3)それに引き続いて各種炎症性サイトカイン類やiNOSの誘導が生じることが明らかになった。また、術後腸麻痺などの腹腔内(消化管管腔外)からの侵襲においては奨膜中皮細胞が細胞傷害をはじめに受けることを形態学的に明らかにした。従って、この細胞傷害性の刺激が発端となり腹腔内への腹腔マクロファージなどの炎症応答細胞浸潤の亢進、消化管壁への炎症の伝搬が生じる可能性が示唆された。一方、奨膜中皮細胞には各種サブタイプのnACh受容体が発現しており、薬理学的解析からこれらの炎症応答の一部はα7nACh受容を介して抑制されることを明らかにした。しかし、その他のnACh受容体が関与することも示唆された。また、α7nACh受容体欠損マウスを用いた解析によっても同等の結論を導かれた。最後に、電子顕微鏡を用いた解析により消化管壁奨膜部直下には末梢神経末端が分布することを世界ではじめて確認した。奨膜直下への神経分布は回腸に比べて大腸で多く、今後、さらに迷走神経刺激による奨膜中皮細胞の炎症応答制御について解析する必要性があると考えられた。
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