研究概要 |
本研究の目的は,ヘルペスウイルスが非自然宿主に致死性脳炎を引き起こすメカニズムを分子レベルで解明することである.すなわち,ウマ属を自然宿主とするウマヘルペスウイルス1型(EHV-1)および9型(EHV-9)を対象とし,非自然宿主であるマウスにおけるウマヘルペスウイルスによる致死性脳炎の発現メカニズムを分子動態として明らかにすることである.今年度はEHV-1を用い,ORF13, 0RF37およびORF76について解析した.これら3つのORFをそれぞれ標識遺伝子で置換した欠損ウイルスを作成した.これら欠損ウイルスの培養細胞における増殖を調べたところ,いずれも増殖能が低下していた.次いで,マウスに接種し,神経病原性に及ぼす影響を調べた.これまでにORF13欠損は必ずしも神経病原性低下につながらないこと,ならびにORF37欠損は神経病原性の低下をもたらすことが判明している.ORF76の評価を引き続き行っている.ORF13については欠損ウイルスの細胞内増殖動態を電子顕微鏡で観察した.その結果,1次エンベロープ獲得ないし2次エンベロープ獲得ができていないことがわかった.生体で増殖に影響が無い理由については今後の課題となった.これらのORFにコードされるタンパク質に蛍光タンパク質を融合させたタンパク質を作成したがウイルス増殖が著しく低下するなどの問題が生じた.そのため,融合部位を変えるなどの対応を行っている.
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