研究概要 |
本研究の目的は,ヘルペスウイルスが非自然宿主に致死性脳炎を引き起こすメカニズムを分子レベルで解明することである.すなわち,ウマ属を自然宿主とするウマヘルペスウイルス1型(EHV-1)および9型(EHV-9)を対象とし,非自然宿主であるマウスにおけるウマヘルペスウイルスによる致死性脳炎の発現メカニズムを分子動態として明らかにすることである.今年度はEHV-1を用いORF38およびORF63の組み換え体およびEHV-9のmRNA発現を解析した.ORF38はチミジンキナーゼをコードしているが,ORF37のプロモーター配列を含んでいる可能性があった.以前の研究からORF37の欠損は神経病原性の低下をもたらすことが判明している.そのため,ORF38欠損のウイルス増殖への影響はORF37発現の低下による可能性があった.ORF38欠損ウイルス感染細胞からORF37mRNAが検出され,ORF38欠損はORF37mRNA発現に殆ど影響しないことが分かった.逆に,ORF37欠損がORF38発現に与える影響をみたところ,同様にORF37欠損はORF38発現に影響しないことがわかった.次いで,神経病原性株Ab4pと非神経病原性株00c19で1アミノ酸が異なるEICPO(ORF63)に着目し,00c19由来EICPOを保有するAb4p(EICPOA416V)を作製した.Ab4p(EICPOA416V)は培養細胞における増殖はAb4p株と同様であったが,マウスでの神経病原性が消失していた.ウイルス感染細胞における網羅的mRNA解析として,次世代シーケンサーを用いた深部塩基配列解読を行った.mRNAの極性を反映させた塩基配列解読によりウイルス由来mRNAのコピー数を定量的に解析できることがわかった.
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