ギセリンとSC1の遺伝子改変動物の作製:昨年度に引き続き、Cre-LoxシステムおよびTet-ON/OFFシステムを導入した遺伝子改変マウスの作製を継続的に行った。ヘテロ動物の作製に成功し、ホモ個体の創出を行っている状態であるが、発生途中で死亡する例が多く、安定していない。 ギセリンの腫瘍マーカー化:血液中の微量ギセリンを検出するためのELISA法の確立に成功した。抗ギセリンモノクローナル抗体を一次抗体とし、ダチョウ卵黄抗体を二次抗体とすることで、50pg/mLの定量検出が可能となった。腫瘍移植マウスを用いた実験により、血中ギセリン値は肺がんの腫瘍体積および進行ステージと相関性があることが判明した。さらに、腫瘍を外科的に切除することにより、ギセリンの血中値も減少し、再発すると再び増加したことから、腫瘍の手術後のモニタリングにも応用可能であることが示唆された。 ギセリンの同種分子結合を利用した癌治療法の開発:ギセリンはラミニンとの結合の他に、ギセリン間の同種結合能を有することから、ギセリン分子に抗ガン剤やRlを標識し、癌細胞に発現するギセリンと同種結合させることで、新規のDDSとしての応用性を検討した。ギセリンの細胞外領域を培養細胞を用いて作製し、ビオチンを標識した。この分子を卵管癌細胞(培養)に添加し、ABC法により可視化したところ、癌細胞の細胞膜に効率よく結合することが判明した。さらに肺癌細胞移植マウスの血液に投与したところ、腫瘍部に選択的に分布していることが免疫組織化学的に判明した。これにより、腫瘍細胞に発現するギセリン分子の同種分子間結合能を利用することが、新規の癌療法になることが期待された。
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