表記課題を達成するための平成20年度の期間で、下記のような実験を進めた。 1.転写因子間の相互作用を解析して、3種のLIM-only proteinとSingle-strand binding protein(SSBP2)をクローン化した。前者の細胞特異的な発現とホルモン遺伝子発現制御への関与を初めて明らかにした。SSBP2では、ミトコンドリアにおける局在と相互作用分子であるコファクターCLIM2の存在により核に移行する特異な挙動を発見し、論文報告した。 2.PROP1およびPRX2の抗体を用いて免疫組織化学を行い、PROP1は13.5日胎仔下垂体の下垂体原基で、すべての細胞に発現し、PROP1陽性細胞には幹細胞マーカーであるSOX2が常に共存する事を見いだし、国際誌に報告した。さらに、生後のPROP1の挙動を調べ、PROP1はホルモン産生細胞に存在せず、ホルモン産生細胞を供給するプロジェニター細胞を維持する機能を持つことを示唆する結果かを得て、論文を作成中である。 3.PROP1およびPRX2を指標として、下垂体の非ホルモン産生細胞を分類すると濾胞星状と言われてきた細胞には3種類が存在し、さらに未同定の2種の細胞が存在することが判明し、下垂体の発生・分化の機序の解明に新知見を与える事ができ、論文を投稿するところである。 4.PROP1とHESX1との相互作用を解析し、前者はホモおよびヘテロ2量体を形成するものの、後者はホモ2量体は形成出来ずに、PROP1とヘテロ2量体を形成して、それまでの抑制的活性を促進的なものに転換することを見いだし、論文報告した。 以上、実験は順調に進んでおり、さらなる展開を期待している。
|