表記課題を達成するための平成23年度の期間で、下記のような実験を進めた。 1.PROP1およびPRX2、SOX2の抗体を用いて胎仔期の下垂体における発現の変動を調べ、それら細胞分布について3次元的分布解析を行い、それら陽性細胞が胎児期21.5日において、幹細胞が存在するとされるMarginal Layerでの局在を確認した。 2.生後のPROP1陽性細胞の局在を調べ、生後600日でも存在する事を初めて確認した。 3.下垂体の幹細胞が生後に胎児期と大きく変化することを確認した。2および3の知見を国際誌に発表した。 4.PRX陽性細胞を調べ、この細胞には、下垂体の幹細胞に発現始める細胞と、下垂体原基周辺にある間葉細胞が、下垂体前葉に浸潤することを発見し、下垂体は起源の異なる細胞からなる事を示した。この結果を論文投稿している。 5.現在使用しているPRX2抗体は2種のホモログ(PRX1・PRX2)を認識することから、特異抗体の作製を行った。その結果、両者に特異な抗体の作製に成功した。それらを使うと、両抗体によって染色される組織に、相当な違いがあることが判明し、現在、その成果を取りまとめている。 以上の結果は、我々が同定した下垂体のホメオティック因子が下垂体前葉のホルモン産生細胞の起源となる細胞・幹細胞に何らかの重要な機能を果たしている事を示すものである。また、これまで不明であった濾胞星状細胞を含めた非ホルモン産生細胞が多様な形質を持つことを明らかにすることができた。さらに、下垂体以外の起源の細胞の浸潤を発見したことから、下垂体の血管形成との関係で新たな研究の展開を期待している。
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