我々が同定したトリパノソーマ・エピマスティゴート型ステージ特異的表面タンパク質(CESP)および既によく調べられている表面タンパク質GARPについて、カナダ・ヴィクトリア大学・ピアソン博士と共同で、結晶構造解析を進めている。H22年度はGARPの構造解析が完了し、論文発表した。CESPについては親水性が極めて高いため立体構造解析のための結晶化が難航しており、現在組換えCESP発現系の検討などを含めて鋭意実施中である。加えて、トリパノソーマの4種類の重要な発育ステージすべての網羅的プロテオーム解析が完了し、論文発表した。このプロテオームデータと前年度に論文発表した遺伝子発現プロファイル(ESTデータ)を合わせることで、トリパノソーマの全発育ステージを網羅する世界初のデータベースを構築することができた。これらの成果によって、これまで明らかでなかったGARPの立体構造が明らかとなった。それによりGARPの基本構造が動物感染ステージの表面抗原、VSGと類似していることが判明し、トリパノソーマのステージ変化と表面抗原の変換が密接にリンクしていることが明らかとなった。また、網羅的プロテオーム解析から、未知のトリパノソーマ発育ステージ特異的タンパク質を多数同定することができ、これらのタンパク質について今後解析を進めていくことで、トリパノソーマの発育ステージ変換に関与する表面抗原の役割が明らかになっていくと期待される。
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