研究概要 |
本年度は昨年度までに我々が同定したトリパノソーマ・エピマスティゴート型(EMF)ステージ特異的表面タンパク質をコードする遺伝子(cesp)の原虫発育時期特異的発現調節メカニズムを明らかにする目的で研究を実施した。EMFは他の発育ステージとは異なり、接着依存性に増殖する点がユニークである。EMFの細胞接着は哺乳類感染型原虫への分化に必須であるため、本研究の成果は接着を阻止して原虫の伝播を防ぐ新規感染予防法開発に発展する可能性がある。まず始めにcespの転写を核run-on assayで解析した結果、α-アマニチン感受性RNA polymerase IIによって転写されていることを明らかにした。次にcespのEMF特異的発現調節機構を明らかにするために、そのmRNA 3'UTRに着目した。cespの3'UTRをeGFP遺伝子と組合せた発現コンストラクトを作製し、トリパノソーマのゲノムに挿入してmRNAおよび蛋白質の発現量を各発育ステージで比較した。その結果cesp 3'UTRを組合せたeGFPの発現はEMFステージ特異的であった。以上の結果からcesp 3'UTRにはEMFステージ特異的遺伝子発現を制御するcis-elementが存在すること明らかとなった。そこでコアとなるcis-elementを同定するため、作製したeGFP発現カセットの一部の配列を欠損させたdeletion mutantを作製し、eGFPの発現をステージ間で比較した。その結果、AUに富むコアcis-element配列を同定し、さらにcis-elementに特異的に結合するEMF細胞質由来RNA結合蛋白質の存在をRNAゲルシフトアッセイで証明した。 これら一連の成果はアフリカトリパノソーマEMF特異的遺伝子発現調節機構を明らかにした初めての報告である (Suganumaら, MBP, 2012)。
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