研究概要 |
ロドコッカス・エクイ中等度毒力株は、豚及び野生イノシシから分離され、保有する病原性プラスミド上には毒力関連20KDa抗原蛋白(VapB)がコードされている。病原性プラスミドは、プロトタイプとなる潜在性プラスミドに異なる系統の菌からPathogenicity island (PAI)が水平伝播した後、DNAの挿入、欠失、突然変異により多型性が生じたと考えられているが、その成立過程はよくわかっていない。これまでに制限酵素切断像から、プラスミド型は32種類に分類されてきたが、今回ブラジルの豚及び野生イノシシから、未知のバンドパターンを示す病原性プラスミドが確認された。新型病原性プラスミドは8型病原性プラスミドと類似した制限酵素切断像を示したため、両者のプラスミド地図を作成すると共に、PAI内外20箇所のシークエンスを行い、全塩基配列が解明されている1型プラスミド(pREA3)を含めた32種類のプラスミド型と比較検討した。両者の類似点は、(1) EcoRI断片Fのサイズが同一(2) R6/4, R4/8Ecoサイトが制限酵素で認識されない(3) EcoT22 I断片c領域に4,000bp以上の断片が挿入(4) No, 16, 813~19, 534領域にかけてPCRによる増幅が困難の4点であり、一番の相違点は、8型においてvapJ, Kをコードする3, 349bpの欠損がみられたことであった。この領域を8型に戻すと2型と類似のプラスミド地図が得られることから、2型が両者の共通祖先である可能性が示唆された。またシークエンス結果から、新型におけるPAI内の領域は1型と近縁な塩基配列が確認され、一方PAI外の領域では半数の領域で8型と近縁な塩基配列が確認された。過去の研究において、1型の塩基配列と類似性の低い8型はプロトタイプに近縁とされているため、新型病原性プラスミドは、分化の進んだ1型とプロトタイプの両者の特徴を兼ね備えていることが分かった。
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