研究課題
我々は、マダニが吸血を介して人獣に媒介する様々な病原体の伝搬機構の分子基盤が、マダニ自身が保有するマダニ生物活性分子の制御下にあることを、バベシア感染動物モデルにて明らかにし、国内外で大きな反響を得た。本研究はこのマダニの原虫伝搬制御に関わる殺バベシア原虫蛋白質(TBP:tick babesiacidal protein)について、マダニ個体内での産生応答と殺原虫機構をさらに詳細かつ包括的な解明を図り、明らかにされたTBPの機能と構造をもとに設計・合成したペプチドを応用した、バベシア症の発症をもたらす赤血球寄生期(赤内型原虫)の発育・増殖を特異的に阻害しうる有効かつ安全なバベシア症治療薬の開発に資することを主要な目的とする。平成23年度は、実験小動物でのTBPのバベシア原虫増殖抑制効果の検証を行った。昨年度までに実施した第1次試験(バベシア原虫in vitro培養系において、TBPをもとに合成したペプチドの原虫増殖抑制効果の検証とノックダウンマダニを用いてのTBPの内在性機能解明)の成果を基に、第2次試験として、効果の確認された殺バベシア原虫ペプチドを用いてB.microti感染マウスでの原虫増殖抑制効果の検証と増殖抑制メカニズムの解明を行った。(1)ペプチド活性残基の検証と決定及び接着局在部位の解析:蛍光標識したペプチドを添加し、バベシア原虫の形態変化にあわせて接着部位と相互関係を明らかにした。また、分子間相互作用解析装置を用いて原虫の膜蛋白質構成分子の中から標的分子を同定し、その蛋白質の構造解析を行った。(2)増殖抑制が確認されたTBPをもとに合成されたペプチドの原虫増殖抑制試験:増殖抑制効果の確認されたペプチドについては、ペプチドアレイ用に準備された20-30残基のペプチドを合成し、活性残基の同定と原虫増殖抑制効果のある混合ペプチドの検討を行った。
2: おおむね順調に進展している
複数の殺バベシア原虫蛋白質が同定され、それらの機能と構造に基づいて作製した合成ペプチドに動物実験で有効な治療効果が確認されたため。
ほぼ計画通りにすすんでいることから、当初の予定通り推進する予定である。ただし、成果に対して公表実績が少ない。原著論文等の作成にもっと努力する必要がある。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)
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