本研究では、疾患に関与するトランスポーターおよびチャネルなどの膜輸送蛋白質の機能調節機構を解明するために、網羅的な蛋白質相互作用検出系の確立を試みた。昨年までにトランスポーター分子の蛋白質間相互作用を網羅的に検出するためのshRNAレンチウイルスライブラリーの作製を試みたが、ウイルスベクターによる遺伝子導入後の細胞において効果的なノックダウンが見られる細胞が著しく少数であったため、より特異性の高いライブラリーを調整する必要があるものと考えられた。 一方、すでに犬赤血球における酸化抵抗性異常に関与する多型として報告した犬GLAST型グルタミン酸トランスポーターをトランスポーター病の標的分子として、野生型および変異型GLAST分子と相互作用する結合蛋白質の探索を試みた。GLAST発現細胞株として赤芽球系細胞K562あるいは人腎由来HEK293細胞を用い、免疫沈降法を応用しGLAST結合タンパク質の探索を実施したところ、2種のPDZドメイン蛋白質NHERF1および2がGLAST分子のC末端に結合することが明らかとなった。この相互作用は結合するGLAST分子の糖鎖成熟度に差異が見られることから、それぞれ異なる細胞内小器官において相互作用し、GLASTの細胞表面発現を調節しているものと考えられた。また、このほかにも新規結合蛋白質と考えられる分子を検出したが、TOF-MS型質量分析装置による同定はできなかった。引き続き精製を続ける一方、LC-MS質量分析装置を応用することにより精度の高い分子同定を試みる予定である。
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