研究課題
本研究では、疾患に関与するトランスポーターの表面発現調節機構を解明を目的に、昨年までに、すでに犬赤血球における酸化抵抗性異常に関与する分子多型として報告した犬GLAST型グルタミン酸トランスポーターをトランスポーター病の標的分子として、2種のPDZドメイン蛋白質NHERF1および2がGLAST分子のC末端に結合することを明らかにした。本年度は、この蛋白質問相互作用のグルタミン酸トランスポーターの表面発現調節機構に及ぼす影響を、生化学的および形態学的手法により解析した。従来これらのPDZドメイン蛋白質は主に細胞膜における足場蛋白質として機能し、トランスポーター分子の細胞膜への局在に関与すると考えられてきた。しかしながら、本研究において、これらの分子の結合が細胞内小器官特異性特異的に起こり、それぞれの小器官間の細胞内輸送に影響することが示唆された。NHERF1は主に小胞体で、NHERF2は細胞膜でグルタミン酸トランスポーターと相互作用するものと考えられた。また、小胞体のNHERF1を含むトランスポーター複合体は、250kDaの新規アダプター蛋白質塗装後作用することを見出し、新たな細胞表面発現調節機構の分子基盤の解明に寄与するものと考えられた。また、NHERF2/グルタミン酸トランスポーター複合体は初期エンドソームにも分布し、small GTPaseの一種であるRab5と共局在する、すなわち、細胞膜から初期エンドソームへのエンドサイトーシスの過程を促進するものと考えられた。以上の結果より、PDZドメイン蛋白質を含む新たなトランスポーター複合体とRabファミリーsmall GTPaseの相互作用によるトランスポーターの細胞内小胞輸送の調節の分子機構の一部が解明され、この複合体の形成機構がトランスポーター病に関与することが示唆された。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)
J.Vet.Med.Sci.
巻: 74 ページ: 17-25
doi:10.1292/jvms.11-0345
Jpn.J.Vet.Res.
巻: 59 ページ: 157-164