1. 前年度までに作出し、増殖したA. mangiumとA. auriculiformisの雑種系統由来の苗条原基集塊を対象に、Agrobacterium tumefaciensのEHA101(pIG121Hm)菌株を用いて形質転換の可能性を検討した。その結果、ハイグロマイシン抵抗性でGUS遺伝子の発現したカルスが得られたものの、このカルスからの不定芽原基は形成されなかった。 2. 倍加剤として前年度まで未検討であったオリザリンおよびブタミフォスについて、in vitro植物の茎節切片を10 mg/lブタミフォスで24時間振とう浸漬処理することによりその倍加効果をコルヒチンと比較した。その結果、供試した3種類の倍加剤で倍加効果は認められたものの、コルヒチンおよびオリザリンでは2倍体と4倍体のキメラが大半であるのに対し、ブタミフォスはキメラでない4倍体が20%得られた。この4倍体の一部は順化することが出来た。なお、前年度に引き続き笑気ガスによる倍加条件を検討したが、今回は4倍体だけでなくキメラ個体も得られず、有効な処理条件を明らかにすることは出来なかった。 3. 本研究開始以前にマレーシアに植林した4倍体を、4年目に現地で生育調査した。その結果、4倍体クローンは同時に植林したもとの2倍体系統とほぼ同様な生育を示し、成長に優位性は認められなかった。また、2倍体の大部分がすでに開花しているのに対し、4倍体では依然として未開花の状態であった。従って、当初の計画である2倍体と4倍体の交配による3倍体の作出に関しては今後の課題として残されることになった。
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