本研究計画は、シアノバクテリアの光合成系とニトロゲナーゼを利用して、水素を化石燃料代替エネルギーとして大規模生産するという長期目標の一環をなすものである。水素生産に利用する酵素は、ニトロゲナーゼであり、通常のMo(モリブデン)型に代わってV(バナジウム)型、さらにはFe-only型の発現により、水素生産性を更に向上させ、将来の大規模水素生産の基盤を強化することを目的し、今年度は下記の実績を得た。 1) Nostoc sp. PCC 7422株のMo型ニトロゲナーゼ遺伝子のnifHの分断による不活性化株の作出:nifH遺伝子とその近傍の遺伝子クラスターの塩基配列の取得と、遺伝子分断破壊用オリゴヌクレオチドのPCR増幅はすでに完了していた。nifH遺伝子を抗生物質耐性化遺伝子による分断破壊のために、その下流にΩプラスミド断片を挿入したたプラスミドを作製した。これを、triparental mating法により、取込み型ヒドロゲナーゼ活性を抑制したPCC 7422 △Hup株に導入し、変異株を選抜する研究を継続中である。 2)培地中のMo濃度を低下させることにより、Mo型ニトロゲナーゼ活性が低く、V型ニトロゲナーゼが高い株を培養により得る方法を確立する:Nostoc sp. PCC 7422 △Hup株は、通常のMo型ニトロゲナーゼの他にV型ニトロゲナーゼも持ち、窒素栄養飢餓状態では、通常は前者が発現するが、Mo欠乏時には後者が発現する。純度の高い試薬の選択と培地の活性炭処理によるMo濃度の低下により、タングステン酸添加によるMo型酵素活性の抑制条件下で、V型による水素生産を確認できた。 3) Nostoc sp. PCC 7422株のV型ニトロゲナーゼ遺伝子vnfHDGKの上流域を含む配列取得:遺伝子クラスターのK塩基配列の取得は完了し、プロモーター領域の解析を行っている。
|