農業利用ができない限界環境地で化学合成肥料を用いることなくバイオマス生産が可能な高度ストレス耐性新マメ科作物-根粒菌素材を開発するために、砂浜に生育するハマササゲ(Vigna marina 8地点)と湿地に生育するナガバハマササゲ(V.luteola 2地点)から種子と根粒を収集した。根粒菌の16SrRNAの塩基配列を解析した結果、ハマササゲにはSinorhizobium属、ナガバハマササゲにはBradyrhizobium属の根粒菌が優占種として着生していた。ハマササゲのSinorhizobium属根粒菌には、NaCl5%、培養温度45℃という過酷な条件下で生育可能な高度ストレス耐性根粒菌系統が見つかった。植物側の高度耐塩性系統を得るために、ハマササゲ50系統、ナガバハマササゲ50系統、アカササゲ(V.vexillata)130系統、計230系統について発芽後3週間の幼植物を用いた水耕栽培によるスクリーニングを実施した。耐塩性が最も強かったのはハマササゲで、NaCl濃度350mM4週間に続く500mM4週間(計8週間)ストレスでも生存可能な系統を選抜できた。次いで耐塩性が強かったのはナガバハマササゲで、NaCl濃度300mM4週間に続く400mM4週間(計8週間)ストレスでも生存可能な系統を選抜できた。3種の中で最も耐塩性が弱かったのはアカササゲであったが、NaCl濃度250mM4週間の後350mM4週間(計8週間)ストレスでも生存可能な系統を選抜できた。ハマササゲは概してどの系統も高い耐塩性を示したが、ナガバハマササゲとアカササゲは耐塩性に関して大きな種内変異を保有していた。高度ストレス耐性野生種を栽培化するための栽培化遺伝子同定を目的に、アフリカ起源の栽培ササゲ(V.unguiculata)と野生ササゲの雑種集団を作成し、226マーカーがマップされた分子連鎖地図を作成した。
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