研究概要 |
限界環境に栽培可能な高度ストレス耐性野生マメ科植物ハマササゲ(Vigna marina)、ナガバハマササゲ(V.luteola)、アカササゲ(V.vexillata)の耐塩性解析を進め、対照的な反応を示した種・系統間での交雑実験を実施した。現在いくつかの組み合わせから得られたF_1雑種植物を育成し、遺伝解析用の集団養成を行っている。この中の1系統は、V.marinaとV.luteolaとの種間雑種である。野生種の栽培化に用いる作物化遺伝子同定のためにササゲ(V.unguiculata)を材料として作物化の過程で大きく寄与した遺伝子群のQTLを明らかにした。石垣島と西表島のハマササゲの根粒から、新たに37株の根粒菌を単離し、その微生物の種を、16S-rRNAで決定後、耐塩性、耐pH性、高温耐性を調べた。その結果、5%のNaCl濃度、pH11、温度45℃で生育できるSinorhizobium属,Bacillus属,Agrobacterium属と類縁の高い根粒菌が各1株ずつ得られた。また、4%のNaCl濃度、pH11、温度45℃で生育できるAgrobacterium属細菌7株、Sinorhizobium嘱細菌が1株存在した。なお、これらのAgrobacterium属やBacillus属細菌はPCR法によりnod遺伝子を保持していることが確認できたことから、新種の根粒菌である可能性が高い。次年度の解析のために小笠原母島に自生するハマササゲから根粒を採取した。15N自然存在比を調べることで、高度ストレス耐性野生マメ科植物の自生地における窒素固定活性を推定した。対馬のV.vexillata、石垣、西表のV,luteollaとV.marinaともに、マメ科以外の植物との間で15N自然存在比に大きな有意差があり、自生地での生育に必要な窒素の大部分を空中窒素固定に依存していることが明かになった。
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