研究概要 |
キュウリモザイクウイルス(CMV)ベクターによって2つの内在性の植物遺伝子に対して転写型ジーンサイレンシング(TGS)を誘導することに成功した.ターゲットはペチュニアのchalcone synthase (CHS)遺伝子とトマトのLeSPL-CNR遺伝子である.いずれもターゲット配列にDNA methylationの増加が確認され,その配列に結合しているヒストンでは,H3K9me2が増加し,H3Acが減少した.さらに,ウイルス感染個体では,いずれもターゲット遺伝子のTGSの結果生じたと考えられる表現型の変化が観察できた.これらの結果より,CMVベクターを用いて植物内在性遺伝子をターゲットとして人工的なTGSを誘導できることを証明することができた.さらには,ウイルス感染個体から得られた後代の植物においても表現型の変化を確認することができた.しかし,親のウイルス感染植物より,その表現型変化の程度は低下しており,DNA methylaiotnの頻度も減少していた.したがって,このエピジェネティック制御は後代に遺伝するものの減衰していくものと思われる.いずれにしても,内在性植物遺伝子に人工的に誘導したエピジェネティック制御が後代に遺伝することを明らかにした.この新規ウイルスベクター技術は,遺伝子組換え植物を作出することなしに,ターゲットの表現型を誘導することができる新植物形質転換法の開発につながるものである.
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