研究概要 |
植物を宿主とする有用物質の組換え生産は、今後普及する技術として注目されている。そこで各種の蛋白質の植物中の生産が試みられているが、蛋白質によってその安定性は異なっている。しかし、この安定性の違いに関しての系統的な解析は為されていない。そこで本研究では、植物細胞に発現させた外来蛋白質の細胞質への凝集体としての蓄積と分解の機構と、分泌系に導入した外来蛋白質の液胞への輸送による分解機構について、蛍光蛋白質をレポーターとして用いた生細胞の可視化技術を用いることにより、植物細胞での蛋白質の蓄積と分解の機構について新規な知見を得ることを目的としている。そこで本年度も、次の2項目について研究を進めた。 1)外来蛋白質の細胞質への凝集体としての蓄積機構の解析 昨年に蛍光変換タンパク質を用いて見出した、凝集体の分解の制御のうちリン酸欠乏による分解について、亜リン酸をリン酸のアナログとして解析を行った。その結果、亜リン酸はリン酸欠乏依存のオートファジー誘導を遅延させるが、それを完全に阻止はしないことをみいだした。また、リン飢餓で、内在性蛋白質であるグリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼも分解される事を見出したが、この分解については、亜リン酸の効果が見出されない事を見出し、リン酸欠乏による蛋白質分解の誘導系には複数のものがあると結論付けた。また,本研究で開発した蛍光変換蛋白質のバルク蛍光変換系の応用として、蛋白質や細胞内小器官等の代謝回転に関する研究も併せて行った。なお、本年度計画していたシャペロンホモログに対する抗体を用いた解析については,抗体の反応性に問題が生じたために、確定的な結果が得られていない。
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