研究概要 |
HeLa S3細胞にデオキシコール酸(終濃度:50μM)を添加した後、一定時間経過ごとに細胞を取り出してタンパク質試料を調製し、それぞれ2次元ゲル電気泳動により分離した。その結果、α-enolaseの翻訳後修飾タンパク質を詳細に解析すると、刺激後1時間でスポットの塩基性側へのシフトが認められ、8時間後にはほぼコントロールと同じパターンに戻ることが判った。また、peroxiredoxin-1においてもほぼ同様の変化が認められ、刺激1時間後には最も酸性側のスポットの染色強度は極めて薄くなったものの、8時間後にはほぼコントロールの状態に戻った。このことから、これらの変動は刺激により一過性に起こるものの、細胞内にその修復機構が存在することが示唆された。次に、各スポットに含まれるタンパク質を詳細に解析したところ、α-enolaseのスポットには、Rab GDP dissociation inhibitor beta、elongation factor 1-gamma等の他のタンパク質も含まれていることが明らかとなった。 ケノデオキシコール酸固定化cleavable affinity gelを用いて、Hep G2細胞やラット肝組織中の結合タンパク質の抽出を試みた。その結果、Hep G2細胞からperoxredoxin-1の他、tubulin-α,β、elongation factor 1、Importin-1,7、exportin-2、dihydrodiol dehydrogenase等が、またラット肝細胞質画分からperoxiredoxin-1、glutathione transferase、glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase、3-oxo-5-beta-steroid 4-dehydrogenase、elongation factor-1、bile salt sulfotransferase等が選択的に抽出された。特に、peroxiredoxin-1は極めて効率よく濃縮されたことから、本タンパク質がケノデオキシコール酸と強く結合する可能性が示唆された。しかも、本タンパク質は、デオキシコール酸刺激によって変動することが確認されており、両者の結果を考え併せると極めて興味深い。
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