これまでの検討から、培養細胞を用いるin vitroのデータと組織等を用いるin vivoのデータに乖離があることが判明している。通常接着細胞を培養すると細胞増殖により平面的にコロニーが拡大していくが、3次元的に培養するとむしろ分化する傾向があり、より生体内組織に近い細胞群が得られるものと考えられる。そこで、細胞を3次元的に培養し、通常の培養の場合とプロテオームを比較することとした。HepG2細胞を用いて検討したところ、可用性画分中の一部のタンパク質の存在量が全く異なることが判明した。特に、acy1-CoA binding proteinやtriosephosphate isomerase、cofilin-1などの乖離が大きく、現在その理由を調査している。一方、より多種類のタンパク質を一斉に解析することを目的にnanoLC分離の2次元化を試みた。強カチオン交換カラムを用いて分離したフラクションをオンラインでODS系のnanoLCカラムでさらに分離し、それぞれのプロテオームを解析したところ、1次元分離に比べてより多種類のプロテオームを解析可能なことが判明した。 これまでに構築したメタボローム解析法を用いて、各種抱合型胆汁酸のフォーカシングメタボロミクスを試みた。健常人およびコレステロール代謝に異常を来す遺伝性疾患の新生児尿につき比較検討したところ、健常人に比べて患者尿中に多量でかつ多種類の硫酸抱合型胆汁酸類が存在することが判明した。しかも、それぞれのフォーカシングマップの比較から、簡単にマルチ抱合体を特定でき、多くの多重抱合体が見出された。3β-HSD欠損症患者尿中には、酵素欠損により蓄積した3β-sulfooxy-Δ5系の胆汁酸類が多量に存在した。一方、Niemann-Pick病typeC患者の場合は、3β-sulfooxy-Δ5系の胆汁酸の7β位がN-アセチルグルコサミンで抱合され、かつ側鎖末端がグリシンあるいはタウリンにより抱合された多重抱合型胆汁酸類が高濃度で存在することが明らかとなった。
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