研究概要 |
薬物の代謝は,医薬品の作用部位への到達性および滞留性を決定する薬物動態関連因子の一つであり,薬物の副作用とも深く関わっている。多剤併用時に起こりうる薬物-薬物間相互作用には,通常,代謝酵素レベルでの競合阻害といった直接的な分子機構のほか,酵素誘導やネガティブフィードバックといった酵素の発現レベルの変動により薬物代謝活性が影響される間接的なメカニズムも考えなければならない。そこで,本研究では,薬物代謝酵素の発現を制御する生体分子ネットワークレベルでの包括的な理解を得ることを最終的な目的として,テキストマイニング技術により薬物代謝ネットワークと相互作用する化合物に関する情報を網羅的に収集する方法を確立するとともに,得られた情報を構造活性相関の手法により解析する。H21年度は,米国NCBI提供のMeSH Termを解析するとともに,化合物,遺伝子,タンパク質間の相互作用に関する情報抽出のためのルールベースを構築し,自然言語処理ソフトウェア開発環境GATE上に実装した。薬物代謝酵素であるCYPの主要な分子種である1A2, 2C9, 2C19, 2D6 ,2E1, 3A4の6種に対して,化学構造が既知の基質709個,阻害剤579個,誘導剤308個を抽出することに成功した。ランダムに取りだしたレコードに関して再現率と精度を評価したところ,化合物名抽出に関してはそれぞれ86%,87%,相互作用抽出に関しては72%,84%であった。
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