研究概要 |
薬物の代謝は薬物体内動態の重要な決定因子であり、代謝酵素の誘導や阻害によって薬物の治療効果が大きく変動することがある。そこで,本研究では,薬物代謝酵素の発現を制御する生体分子ネットワークレベルでの包括的な理解を得ることを最終的な目的として,テキストマイニング技術により薬物代謝ネットワークと相互作用する化合物に関する情報を網羅的に収集する方法を確立し,得られた情報を構造活性相関の手法により解析してきた。本年度は、昨年度までに開発してきたテキストマイニングシステムに対し辞書データベースおよびルールベースを見直すことで、代謝酵素の発現制御に関わる因子を抽出できるシステムを開発した。これを用いてPubMedデータベースを網羅的に解析したところ、代表的な薬物代謝酵素であるCYP3A4に関してはその発現制御因子15種類を抽出することに成功した。そのうち、Pregnane X Receptor (PXR)を例にとって評価したところ、精度および再現率ともに約90%という高い値が得られた。次に、この抽出結果に加え、PubChem Bioassayデータベース等で公開されている情報とを合わせて、PXRとの相互作用に関する大規模な構造活性相関解析を実施した。270個のPXR agonistおよび248個のnon-agonistsのデータに対して再帰分割法による解析を行なった結果、交差予測においても70.9%の精度が得られた。一方、得られたディシジョンツリーの分岐ルールを精査したところ、分子の電気的性質とりわけπ-π結合に関与するパラメータが化合物とPXRとの相互作用に重要であることが明らかになった。
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