研究概要 |
機能性高分子修飾分離担体のナノ界面制御技術に基づき,タンパクとの相互作用調節するテクノロジーによる新規バイオセパレーションシステムの構築と臨床現場で薬物モニタリングを行うon-site生体機能解析の実現を図る。本年度は以下の2点を中心に検討し研究成果の一部は,それぞれ学術誌に論文として報告した。 1.高密度温度応答性ポリマーブラシを用いた効率的なペプチド分離固定相の開発:表面開始精密重合法により多孔性ポリマービーズ上に種々の温度応答性高分子ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)を修飾し,温度応答性クロマトグラフィー固定相としての評価を行った。高分子修飾ビーズによるペプチドの分離は,修飾量,鎖長,細孔径,修飾部位,基材ビーズの性質により大きく影響を受けることが示された。本研究で調製した固定相により緩衝液のみを移動相とした際のペプチド分離度の向上,塩基性移動相を用いた塩基性ペプチドの保持制御を達成した。耐久性が問題となるシリカゲルに替わる新しいバイオセパレーション用固定相として期待できる。(Biomacromolecules 2009, J.Chromatogr.A 2010) 2.温度応答性クロマトグラフィーによる麻酔薬プロポフォールの血中濃度測定:超短時間作用型静脈麻酔薬であるプロポフォールは,外科手術における全身麻酔薬として汎用されている。本剤投与時には麻酔深度の調節が必須であることから,リアルタイムでの血中濃度測定が望まれている.本研究では,プロポフォールを静脈投与したサル血中濃度の経時変化を測定し,得られた定量値を従来法による結果と比較したところ,両者の値は良好に合致しており,温度グラジエントによる分析時間短縮も可能であった。本法は移動相に水のみを使用し,カラム温度によって溶質の保持時間を制御できることから,患者や医療従事者に対する有機溶媒暴露がなく,煩雑な移動相条件の検討が不要なため多忙な臨床現場でも容易に使用可能であることが確認された。(J.Chromatogr.A 2009)
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