研究概要 |
AGEがRAGEに結合することで種々の細胞現象が誘導されることが見出され、AGE-RAGE相互作用によるシグナル伝達を阻害する物質を見出せれば、糖尿病血管合併症の予防・治療薬に成る得ると考え、その阻害剤の探索を行ってきた。リガンドーレセプターの相互作用に関する研究はリガンドに関する知見から始めるのが一般的であるが、リガンドが同定されていないこのAGE-RAGE系では事情が大きく異なっている。我々はレセプターの構造よりアプローチする戦略をとり、まずRAGEのAGE結合部位を含むと考えられるドメイン(vRAGEと名付けた)の構造をNMRにより決定した。この構造情報を用いてコンピュータ上でのバーチャルスクリーニングにより、特異的にRAGEに結合することが期待される候補物質約100種を抽出した。その化合物に対しELISA実験を行い、糖化アルブミンと競合的に結合するものを4種見出した。それらはAGEがRAGEに結合することにより惹き起こされる細胞内シグナルの一つである転写因子NF-□Bの活性化を阻害する活性を細胞レベルで示した。これら化合物の誘導体の化学合成を行い、合成した誘導体についてそれぞれBiacore測定や,NF-□Bの活性化阻害を指標としたレポーターアッセイを行うとともに、合成過程にフィードバックすることにより活性の高いものを見出す努力を重ねた。活性の高いものについてレセプターとの結合を種々の物理化学的手法を用いて熱力学的な解析を行っている。得られた情報を用いて結合部位の同定、結合様式の解析、並びに、in vivo, in vitroにおける生物活性を解析し、リード化合物の最適化を行っている。
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