研究課題
本研究では、従来の合理的薬物設計(Structure-Based Drug Design : SBDD)の手法の改良を目指し、受容体とリガンドの複合体の立体構造解析に加え、両者の相互作用を熱力学的に解析し、迅速な薬剤設計法の創出を目論んでいる。この創薬の手法の開発に際し、特に(1)最近AGE受容体(RAGE)を介して糖尿病に特徴的な血管細胞を変化させ、その結果血管障害が生じることが明らかとされたAGE-RAGE相互作用の阻害剤を探索すること、(2)II型糖尿病治療薬の標的蛋白質として注目されている核内受容体PPARγとリガンドとの相互作用解析を二つの大きなテーマとした。(1)については、昨年度中に合成した候補化合物の内、結合のある程度強いもの、活性の高いもの200種以上の候補物質について、結合サイトの同定を遺伝子操作によるRAGEの変異体の合成により行い、次にtrNOE、STD法、water LOGSY法など分子間相互作用に直接寄与する^1Hを低分子側であるリガンド(薬剤)で選択的に検出するNMR手法を種々検討した。(2)について等温滴定型熱量計(ITC)よりリガンド依存的な複合体形成に伴う熱力学パラメータの求めた結果、中間の活性をもつリガンドが最も強い親和性を示した。これは一般に信じられてきた結合親和性を高くすると活性強度が向上するとの考えを否定していて、我々のエントロピー項の検討が新規薬剤設計に重要であるとの主張が裏付けられたことになる。このリガンドの複合体形成に伴うエントロピー変化の実体を明らかにするため水和量の変化の視点から捉える事を試みた。すなわち複合体形成に伴う疎水的相互作用の結果現れる脱水和を溶質の偏比容の変化として測定できると考え、その測定法および結果の解析法を検討した。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (2件)
J Phys Chem B.
巻: 116 ページ: 6908-6915
10.1021/jp212631q
Biopolymers
巻: 98 ページ: 111-121
DOI:10.1002/bip.21730.
J Pept Sci.
巻: 17 ページ: 595-600
10.1002/psc.1381
Biochem J.
巻: 436 ページ: 101-112
10.1042/BJ20102063