研究課題
本研究では、リゾホスファチジン酸(LPA)とリゾホスファチジルセリン(LPS)を中心に、生理活性脂質リゾリン脂質生体内機能の包括的理解を目指した。LPAについて、LPA産生酵素であるオートタキシン、ホスファチジン酸選択的ホスホリパーゼA1、各LPA受容体ノックアウトマウス等を用いた生理的・病理的機能の解析を行った。特に、ホスファチジン酸選択的ホスホリパーゼA1を用いた解析により、毛髪の形成過程におけるLPAシグナルの作用機序を個体レベルで示すことに成功した(論文投稿中)。さらに、オートタキシンに対する特異的モノクローナル抗体を樹立し、この抗体が特定の難治性疾患の進展を抑制する機能を有することを示すことで、難治性疾患の有望な創薬ターゲットとしての可能性を示した(論文投稿中)。また、ゼブラフィッシュを用いたリゾリン脂質シグナリングの解析を行った。具体的には、LPA産生酵素および受容体に対するモルフォリノ、および共同研究によって得たLPA受容体の変異体を用い、発生期におけるLPAシグナルの機能解析を行った。様々なトランスジェニック系統を用いることで、特定の臓器の形成過程をリアルタイムで非侵襲的に観察することにより、各LPAシグナル関連遺伝子の機能欠損、あるいは抑制時に生じる異常を詳細に解析することが可能となった。これらの解析により、特定の臓器の形成過程に重要なLPA産生酵素およびLPA受容体の同定にほぼ成功した(投稿準備中)。一方、脂質生化学的な解析方法としてマススペクトロメトリーを用いた各種リゾリン脂質の定量法を確立した(投稿準備中)。この方法を用いてマウス・ヒトの様々なサンプルについて、各種リゾリン脂質を解析した。さらに、新規リゾリン脂質受容体の同定を目指し、全く新しいGPCRの活性測定方法を確立した(投稿準備中)。今後は、このGPCR活性測定法を用いて、様々なサンプル中に含まれる多様なリゾリン脂質の中に、新しいリゾリン脂質メディエータおよびその受容体が見出されることが期待される。
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