研究課題/領域番号 |
21390017
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
山口 直人 千葉大学, 大学院・薬学研究院, 教授 (00166620)
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研究分担者 |
中山 祐治 千葉大学, 大学院・薬学研究院, 准教授 (10280918)
福本 泰典 千葉大学, 大学院・薬学研究院, 助教 (10447310)
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キーワード | Lyn / ACSL3 / 共焦点顕微鏡 / シグナル伝達 / チロシンリン酸化 / 細胞核 / ゴルジ体 / 細胞内トラフィック |
研究概要 |
チロシンリン酸化異常はがん、糖尿病、免疫病など様々な疾病に関わり、チロシンキナーゼを標的とした治療薬が開発されている。非受容体型チロシンキナーゼであるSrc型キナーゼは細胞質で生合成され、翻訳後脂質修飾により、細胞膜に係留して受容体からのシグナルを細胞内に伝達し、増殖・分化・細胞運動などに深く関与する。しかし、Src型キナーゼは細胞膜の他に、エンドソーム/リソソームやゴルジ体や核にも存在しているが、細胞膜以外での機能は殆ど明らかでない。申請者らは、Srcメンバーの1つであるLynが細胞質で生合成後にゴルジ体膜に蓄積してから細胞膜へと輸送されることを見出した。本研究では、次のことを明らかにした。 ゴルジ体から細胞膜へのLynの輸送は、Lynキナーゼドメインへのlong-chain acyl-CoA synthetase 3(ACSL3)のゴルジにおける一過性会合により、開始されることが分かった。ACSL3過剰発現はLynをゴルジから細胞膜への輸送を促進させ、逆に、ACSL3ノックダウンはLynの輸送をゴルジに止めた。また、CskによるLynのclesed conformation化もACSL3会合抑制を起こしてLynの輸送をゴルジに止めた。しかし、Lynキナーゼ活性やACSL3酵素活性は必要が無かったことから、蛋白質相互作用が重要であることが分かった。Lyn含有ポストゴルジ輸送小胞は、VSV-G輸送担体やカベオリン輸送担体などと異なっており、Srcメンバーのc-SrcもLynとも異なる輸送小胞であった。本研究により、Lynがゴルジ経由で、細胞膜へ輸送される分子機構の一端が初めて明らかになった。さらに、Lynの核内機能の1つとして、Lynによるチロシンリン酸化がクロマチン凝縮に関わることを見出していたので、リン酸化チロシン蛋白質を精製して質量分析機で解析したところ、DNA結合蛋白質に会合するチロシンリン酸化核内蛋白質が同定できた。従って、チロシンキナーゼのオルガネラ特異的な局在機構に関する本研究により、新たなチロシンリン酸化シグナル伝達系の発見とその制御機構を明らかにできるものと期待される。
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