研究課題
チロシンリン酸化異常はがん、糖尿病、免疫病など様々な疾病に関わり、チロシンキナーゼを標的とした治療薬が開発されている。非受容体型Src型キナーゼは細胞質で生合成され、翻訳後脂質修飾により、細胞膜に係留して受容体からのシグナルを細胞内に伝達し、増殖・分化・細胞運動などに深く関与する。しかし、Src型キナーゼは細胞膜の他に、エンドソーム/リソソームやゴルジ体や核にも存在しているが、細胞膜以外での機能は殆ど明らかでない。本研究では、Src型キナーゼのシグナルを細胞内局在選別に関して時空間的に解析し、オルガネラ特異的なシグナリング経路を研究し、次の事を見い出した。1.GSTプルダウン実験により、ACSL3と同様に、新規Lyn会合分子がLynキナーゼ領域に結合することを明らかにし、Lynキナーゼ領域がopen構造になると会合することを見出した。2.リソソーム膜を含む細胞画分でin vitroリン酸化を行ない、チロシンリン酸化バンドの質量分析の結果、c-Srcのリソソーム膜での基質候補を得た。3.Src型チロシンキナーゼc-Src,Lyn,Fyn,c-Yesの過剰発現・ノックアウト細胞系を駆使して、染色体と紡錘糸に着目した時空間的解析により、紡錘糸の安定性とSrc活性の関連を見出した。4.Ab1キナーゼおよびErbB4キナーゼに関して、核/細胞質問シャトリングおよび核内チロシンリン酸化反応を会するヒストンメチル化・アセチル化のクロマチンエピジェネティックスを見出した。5.リン酸化チロシン残基を特異的に認識する単クローン抗体のアフィニティーカラムを作製して、核局在チロシンキナーゼであるLynなどのチロシンリン酸化基質蛋白質を精製し同定をし、点突然変異により、リン酸化部位のチロシン残基を決定した。従って、チロシンキナーゼのオルガネラ特異的な局在機構に関する本研究は、新たなチロシンリン酸化シグナル伝達系の発見とその制御機構へと進展することが期待される。
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