研究課題
本研究は膜型ムチンであるMuc21の癌細胞の挙動、特に報告されている免疫抑制能との関連を明らかにすることを目的としている。リコンビナント分子のin vivoでの免疫修飾効果、細胞表面に発現した際の癌細胞の挙動への影響、発現細胞と免疫細胞との相互作用における機能、胸腺上皮細胞に発現したMuc21の成熟及び未成熟T細胞への影響などを解析することを予定した。本年度は、Muc21グリコフォームに特異的なモノクローナル抗体の取得とそれらの特性解析、モノクローナル抗体を用いた胸腺における発現解析、発現細胞の挙動、特にアポトーシス耐性の解析、及びグリコフォームの異なるリコンビナントMuc21の産生とその構造の解析を目的とした。T抗原を持つMuc21に特異的なモノクローナル抗体に続いて、シアル酸を含む糖鎖を持つMuc21に特異的なモノクローナル抗体の取得を目指してスクリーニングを行い、複数のハイブリドーマを得た。また、これと並行してノックアウトマウスの解析を行い、二回目の試みとなる今回のアプローチで、C57BL/6を背景とするノックアウトマウスが作出されたことを示した。Muc21を発現した癌細胞のin vitroにおける挙動解析は、糖鎖生合成経路に変異のあるCHO細胞や種の異なる細胞にMuc21を発現させることにより、抗接着性だけでなくアポトーシス耐性に関しても、分子ドメインの重要性の確認、グリコフォームの重要性の検証に成功した。要約すれば、後者においてアポソーシス耐性がシアル酸を含む糖鎖を細胞外ドメインに持つことが必須であることが解った。Muc21ベクターをこれらの細胞から細胞外に放出されるようにデザインして発現させ、その産物の精製法を確立した。
2: おおむね順調に進展している
おおむね順調に進展しているが、当初作出した転写開始部位ノックアウトマウスは遺伝子発現が残っていることが明らかになり、二回目の遺伝子全長ノックアウトマウスの作出を行ったため、プロジェクト全体の進め方に影響が出た。また、モノクローナル抗体の使用により、胸腺上皮細胞においてmRNAレベルは高いが、Muc21の発現レベルは低いことが判明しつつあり、この点でも軌道修正が必要になると思われる。
今後の方向性は主に二つあり、第一はMuc21発現細胞がアポトーシス耐性を獲得するメカニズム、特にそれがグリコフォーム依存的である原因の解明である。第二の点は、グリコフォームを異にするリコンビナントMuc21を精製し、グリコフォー。ムを決定した上で、それらの免疫抑制能をin vivoで解析するとともに、樹状細胞との相互作用を解析することによって、免疫抑制の機構を明らかにすることである。
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