上記研究課題において当初の計画に従って実験を行ったので、その成果を報告する。 (1) カタユウレイボヤ精巣で発現するユビキチン化酵素:カタユウレイボヤの精子・精巣で特異的に発現しているユビキチン結合酵素(Ube2r)を同定した。今年度は、このタンパク質と相互作用しうるユビキチンリガーゼE3等のタンパク質を酵母ツーハイブリッド法で探索したが、その候補分子の同定には至らなかった。 (2) 精子表面に存在するタンパク質の解析:カタユウレイボヤ精子表面タンパク質を細胞非透過性のNHSビオチンで標識して精製し、それらのタンパク質のLC/MS/MSを利用した網羅的解析を行なった。その結果、VC57との相互作用が考えられるTTSP1等のタンパク質が同定された。一方、マボヤ精子にも、ユビキチン化酵素やプロテアソームが局在する可能性がある。そこで、網羅的解析を行なうために、ゲノム解読を行なうことを企画した。このデーターベースが構築できれば、マボヤのプロテオーム解析が可能となる。現在はそのライブラリーの作製まで完了しており、平成23年度は、その配列決定とアッセンブリー・アノーテーションを行なう。 (3) マボヤ精子ではプロテアソームのα6サブユニットがC末端で16残基プロセシングされていることを見出した。その意義に関しては現在不明であるが、26Sプロテアソーム上で相互作用するRpt5サブユニットは先体胞への移行に関わると報告されている。よって、α6のC末端領域がRpt5と先体胞との相互作用を阻害すると仮定すると、それが欠失している精子プロテアソームにおいては、プロテアソームの先体胞への移行が可能となるのかもしれない。今後、このC末端領域のプロセシングの意義について研究を行う必要がある。
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