研究課題
血流に乗って体内を循環するリンパ球は、高内皮細静脈(HEV)と呼ばれる丈の高い特殊な形態をした血管から特異的にリンパ節内に浸潤し、抗原と出会う。このリンパ球の浸潤過程においては、リンパ球ホーミングレセプター・L・セレクチンとHEV上の硫酸化糖鎖の相互作用に引き続き、HEV上のヘパラン硫酸に提示されたケモカインによるリンパ球上の接着分子インテグリンの活性化が起こると考えられているが、in vivoにおける証明はない。そこで本研究では、ヘパラン硫酸をHEV特異的に欠損するコンディショナルノックアウトマウスを作製し、HEVにおけるヘパラン硫酸のin vivoにおける機能解明を行うことを目的とする。最近我々は、HEV特異的にCreリコンビナーゼを発現するトランスジェニックマウス(GlcNAc6ST-2-Cre Tgマウス)を新たに樹立した(J. Immunol. 182 : 5461- 5468, 2009)。本研究では、このGlcNAc6ST-2-Cre Tgマウスをヘパラン硫酸伸長酵素EXT1のfloxマウスと掛け合わせることでHEV特異的にヘパラン硫酸を欠損する遺伝子改変マウスを新たに樹立し、その解析を行っている。本研究で得られたコンディショナルノックアウトマウスにおいては、抗ヘパラン硫酸鎖抗体により確かに末梢リンパ節HEVおよび大腸上皮細胞におけるヘパラン硫酸の発現がほぼ欠損することが示された。また、末梢リンパ節HEVにおけるケモカインCXCL12の局在が大きく低下し、ヘパラン硫酸がHEV上におけるケモカインの提示に関与することが明らかとなった。しかし、コンディショナルノックアウトマウスを用いてリンパ球ホーミングを行ったところ、大きな変化は認められなかった。今後は、HEV上におけるリンパ球動態やケモカインのトランスサイトーシスの変化などを検討する予定である。
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