研究課題/領域番号 |
21390024
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
今川 正良 名古屋市立大学, 大学院・薬学研究科, 教授 (20136823)
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キーワード | 肥満 / 脂肪細胞 / 糖尿病 / 細胞分化 / 生活習慣病 / 転写因子 / シグナル伝達 |
研究概要 |
生活習慣病の克服は、健康科学分野における最大の課題である。研究代表者は、脂肪細胞分化の最も初期に注目し、分化のひきがねとして働く重要な遺伝子を、新規遺伝子を含めこれまでに多数単離した。単離した遺伝子のうち新規遺伝子については、fad(factor for adipocyte differentiation)と名付け遺伝子番号で区別している。これまで、新規遺伝子のfad104およびfad24を中心に細胞レベルおよび個体レベルで解析を行ってきたが、平成23年度もこれら遺伝子について解析を行い、以下の結果を得た。 fad104は、脂肪細胞分化のみならず骨分化にも関わっていることを昨年度見出したが、今年度はその制御にBMP/Smadシグナルが深く関わっていることを明らかにした。また、fad104のノックアウトマウスが出生直後に死亡することはすでに報告したが、その原因として、fad104が肺発生に深く関わり、肺胞上皮細胞の分化・成熟に必須な新規遺伝子であることを明らかにした。さらに、fad104ホモ欠損マウスは、頭部の異形成を引き起こすことも明らかにした。一方、fad24については、昨年度ノックアウトマウスの作製に成功し、今年度遺伝的背景を揃えるバッククロスを終えた。そこでそれらを用いて解析したところ、fad24ホモ欠損マウスは胎生致死であることが明らかとなった。さらに詳細に解析したところ、胎児形成の比較的初期に致死的となることも判明した。 以上のように、脂肪細胞分化に深く関与する遺伝子群が、脂肪細胞分化のみならず、骨分化、肺形成など多彩な機能を有することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脂肪細胞分化に新規遺伝子fad104およびfad24が重要な役割を果たしていることを明らかにしてきたが、そのシグナル伝達連関についておおむね順調に解析が進んでいる。その一方で、両遺伝子のホモノックアウトマウスの作製に成功したが、両新規遺伝子共に、脂肪細胞分化以外にも重要な役割を果たしていることを明らかにしつつある。
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今後の研究の推進方策 |
今後もこれまでの検討をそのまま進めていく予定である。fad104およびfad24が、脂肪細胞分化以外にも新たな機能を有することについては、これまで他に全く報告がない。すなわち本研究課題オリジナルの成果である。頭部異形成はヒトでも観察されることから、fad104については骨形成との関連性をさらに明らかにしていく予定である。骨形成と脂肪細胞分化は極めて近い関係にあることから、どちらに進むかfad104が決定的な因子として働いていることを想定し研究を進める。また、fad24は胎生期の極めて初期に重要な働きをしていることから、その時期の特定をするとともに、DNA複製を含む細胞分裂に着目して検討を進める予定である。
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