研究概要 |
我々は世界に先駆けて、ヘパラン硫酸(HS)やコンドロイチン硫酸(CS)などの硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)鎖の生合成に関与する10種類以上の酵素遺伝子のクローニングを行ってきた。本研究では、これら合成酵素の活性や発現を改変することにより、硫酸化GAG鎖の発現制御メカニズムや機能を明らかにし、その成果に基づいた病態の解明と治療のための基盤となる研究を行う。本年は、以下の2つに関する結果を得た。 (1)グルクロン酸転移酵素(GlcAT-1)ノックアウトマウスを用いたGAG鎖の機能解析: 我々は、GlcAT-1のノックアウトマウスを作成し、ホモ接合体は胎生致死になることを見いだした。致死となるステージは、主に8細胞期までの発生の初期段階であることが明らかとなった。この現象は、線虫の系で我々らが見いだしたコンドロイチンた欠損した初期胚で細胞分裂がうまく進まず多核の細胞が蓄積する現象(Mizuguchi, et al., Nature, 423、443-448,2003)と類似しており、実際、致死となった胚を観察すると多核になっていた。 (2)遺伝性多発性外骨腫の発症メカニズムの解明を目指したEXT癌抑制遺伝子ファミリーによるHS鎖の生合成機構の解析:EXT1欠損細胞ではEXT1/EXT2の複合体形成ができないため、HS鎖の重合化は起こらないもの予想されていた。しかし、EXT1欠損細胞であるgro2C細胞においてもHS鎖が合成されており、その合成量は野生型の細胞株であるL細胞の約10分の1程度に低下し、その鎖長も短くなっていた。また、gro2C細胞ではEXT1が欠損しているにも関わらずHS鎖が合成されているのは、EXT2とEXTL2によるものであることが明らかとなった。
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