研究概要 |
HIV感染症・AIDSの治療法としては、逆転写酵素阻害剤とプロテアーゼ阻害剤の2,3剤を併用する療伝((HAART)が多大な成功を収めたが、耐性ウイルスの出現や重篤な副作用の発現、治療費の高騰などの問題点もあり、他の作用点を有する薬剤の開発も推進されている。本研究では、CXCR4阻害剤等やHIV侵入の動的超分子機構をターゲットとした薬剤、及び今までに着手されていない作用機構を標的とした薬剤の開発を行なった。1.CXCR4はHIV感染の後期に主流になるT細胞指向性HIV株(X4-HIV-1)が主に使用するコレセプターである。今までに強力なCXCR4アンタゴニストである14残基のペプチドT140とその低分子誘導体である環状5残基のペプチドFC131、および、それほど高活性ではないが、低分子非ペプチド性アンタゴニストを創出している。これらを基に、より医薬品としてのプロフィールの優れた化合物を開発した。2.CD4はHIVが細胞に感染するときの第一受容体であり、soluble CD4等のCD4関連物質はHIVの感染を阻害することが知られている。われわれの開発した低分子型CD4ミミック誘導体を創出し、顕著なHIV侵入阻害活性があることを見出した。さらに、CD4ミミックはHIV外皮蛋白gp120のコンフォメーション変化を誘起すること、また、この構造変化によりコレセプター結合領域を認識する中和抗体(抗V3 loop抗体)の結合能が上昇することを明らかにした。CD4ミミックのさらなる活性上昇とT140誘導体とのコンジュゲート(dual drug)の創製を行い、高活性な化合物を見出した。3.インテグラーゼ阻害剤:現在までに他のHIV構造蛋白Vprの部分ペプチドから、インテグラーゼに結合してmicro molarレベルの阻害活性を示す6アミノ酸残基からなる顕著なアミノ酸配列モチーフを有するペプチド断片を得ている。本研究で、高活性なインテグラーゼ阻害活性を有するペプチドミメティク、非ペプチド性化合物の創製を行なった。
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