研究概要 |
金属触媒を用いたトリフルオロメチル基のアルキル基へのクロスカップリング反応の報告はない。その理由はまずトリフルオロメチル基が強力な電子求引性の置換基であるため,通常のアルキル基とは全く異なる挙動を示し,反応種の制御が難しいことが挙げられる。さらに不斉炭素を構築するためには基質に第二級,第三級アルキルハライド,つまりC(sp3)-X結合を有する化合物を用いなければならないが,これはβ水素脱離機構を経由する副反応が併発する。そのため,トランスメタル化の段階で望む触媒サイクルを経由するような触媒システムの考案が必要となる。そこでまず,第一段階として,第一級アルキルハライドのクロスカップリング反応を見出す必要性があり,研究に着手した。まず,トリフルオロメチル基の導入源として,求各的トリフルオロメチル化試薬であるルパート試薬を用いて,種々の金属の存在下,ベンジルブロマイドとの反応を検討した。銅,鉄,亜鉛など様々な金属を用いて,カップリング反応を試みたが,目的とする化合物は得られなかった。次に我々が独自に開発したスルホニウム塩型の求電子的トリフルオロメチル化試薬をトリフルオロメチル基の導入源として用いることにした。まず,その結果,銅を用いたときに,目的のトリフルオロメチル体を良い収率でえることに成功した。続いて,反応の一般性を調べるため,様々なベンジルブロマイド誘導体との反応を試みた。いずれの場合も目的物を最高90%で得ることに成功した。
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