研究課題
本研究の目的は、新しいファージ提示技術であるT7ファージ提示技術を用いて構築したヒト単鎖Fv抗体(低分子抗体)ライブラリを用いて、医薬として利用できる高機能性の低分子抗体の創製方法を構築し、得られた抗体の性質、構造を解析することで、抗体工学による高機能性低分子抗体デザインのための分子基盤を確立することである。昨年度までに、シングルドメインVHH抗体ライブラリをT7ファージを使って構築し、このライブラリから、抗原特異的な抗体の濃縮が起こったことを報告した。最終年度は、これらT7ファージ抗体ライブラリから得られた抗体の特性について検討し、本手法の有用性に関する知見をまとめた。VHH抗体のCDR1,2,3の配列をランダム化した合成抗体ライブラリを作製し、抗原としてRNaseAを用いてバイオパニングを行ったところ、4ラウンド目で特異的ファージの濃縮が起こり、最終的にRNaseAに特異的な2種のVHH抗体クローンを得た。これらのクローンは、報告されている抗RNaseA抗体とも異なる配列を示し、本手法が、抗体の単離に十分使用可能であることを示した。この結果を受け、アルパカ(ラクダ科)の血液リンパ球より増幅したVHH抗体遺伝子を使って、ナイーブVHH抗体ライブラリをT7ファージ上で構築し、抗原特異的なファージクローンの単離を試みた。バイオパニングの操作によって、結合ファージの濃縮が見られたが、同時に非特異的な結合ファージの濃縮も起こった。以上の結果から、T7ファージライブラリによる抗体の単離は、迅速で有用な手法ではあるが、おそちくは、抗体のフォールディングの問題により非特異的な結合を起こすクローンの存在が多い場合には、特異的クローンの単離は、成功する確率が低くなることが示された。
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Peptide Science 2011
ページ: 25-26
J Neuroimmunol
巻: 236 ページ: 27-38