研究概要 |
arylidene-thiazolidinedione骨格を基盤として、構造展開を計画し、種々の誘導体を合成した。得られた誘導体について、低酸素及び常酸素下、HCT-116細胞を用いたMTT assay及びclonogenic assayを行ったところ、thiazolidine- 2, 4-dione類はいずれも100μMまでの範囲でほとんど細胞毒性を示さなかった。さらに、鶏卵漿尿膜(CAM)法によるin vivo血管新生阻害試験を実施した。GPU-4は、10ng/CAMという低用量で有意な血管新生阻害作用を示した。また種々の誘導体について構造活性相関を検討したところ、arylidene-thiazolidinedione系血管新生阻害剤において、aryl基からカルボニル基まで連続した共役系による平面性、thiazolidinedione基の水素結合ドナー性及びベンゼン環の3,5位ジメチル基の存在が重要であることが示唆された。GPU-4の作用機構を解明すべく、低酸素応答配列(HRE)をプロモーター領域に有するルシフェラーゼベクターを導入した細胞株HEK293p2.1細胞を用いて低酸素応答プロモーターアッセイを行ったところ、GPU-4は12.5μM以上の濃度でHIF-1転写活性化を抑制した。さらにウェスタンブロットの結果、低酸素で誘導されるHIF-1αのタンパク発現を抑制した。また、リアルタイムPCRにより低酸素で誘導されるVEGFの遺伝子発現も抑制していることが明らかになった。GPU-4及びその誘導体について、マウス高酸素負荷網膜血管新生モデルに対する作用を調べたところ、皮下投与で濃度依存的に網膜異常血管を抑制した。この機構として、VEGF誘発ROS産生抑制作用が関与することが明らかになった。以上より、GPU-4は副作用を伴わない新規網膜血管新生抑制剤になり得ることが示唆された。
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