研究概要 |
胆汁酸-FGF系による新規肝脂質代謝調節の機序の解析のため、胆汁酸による回腸FGF15/19の発現調節の機序とFGF15/19の肝臓脂質代謝調節の機序の2つの方向から解析を実施した。前者については平成21年度の研究により抗菌薬投与による腸内細菌の減少が腸内細菌による代謝により生成される胆汁酸(腸内細菌代謝型胆汁酸)を減少させ、その結果としてFGF15発現が低下することが示唆された。よって本年度は胆汁酸投与によるFGF15発現変動について解析した。抗菌薬のアンピシリンと腸内細菌代謝型胆汁酸のコール酸(CA)あるいはタウロデオキシコール酸(TDCA)を併用投与するとアンピシリン単独投与で減少したFGF15発現が回復し、特にCA併用投与でFGF15発現が強く誘導した。一方タウロコール酸(TCA)併用投与では発現の回復は認められず、腸内細菌によるTCAからCAへの脱アミノ酸抱合がFGF15発現に重要な役割を担っていることが示唆された。一方ヒトFGF19タンパクを回腸FGF15発現が低下しており、肝内脂質レベルが高く脂質代謝異常モデルと考えられるfarnesoid X receptor(FXR)欠損マウスに400mg/kgあるいは4mg/kgで投与すると肝内トリグリセリドが400mg/kg投与で、遊離脂肪酸が4mg/kg,400mg/kg投与で有意に減少した。一方で血漿中のトリグリセリドはFGF19投与量依存的に有意に増加した。脂質代謝関連遺伝子の発現レベルを測定すると、FGF19投与によりacetyl-CoA carboxylase 1, acetyl-CoA carboxylase 2, stearyl-CoA desaturase 1の有意な減少が認められ肝内の脂肪酸β-酸化の亢進と脂肪酸、トリグリセリド生成の低下が示唆された。また肝内への脂肪酸の取り込みに関与するCd36発現の低下も認められた。以上の結果よりFGF19は肝臓の脂質代謝さらに肝臓/血中の脂質移動の調節に関与し、肝内と血中の脂質レベルを調節していることが示唆された。
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