ダイオキシン受容体AhRや低酸素誘導因子HIF-1αとヘテロダイマーを形成し、異物応答ならびにストレス応答に関与する多くの遺伝子の転写活性化を担うヒトAhR nuclear translocator (ARNT)の発現調節にmicroRNAが関与する可能性を検討した。ARNT蛋白質の発現は過酸化水素や活性酸素種への曝露により低下することが知られているが、その際miR-24発現レベルの増加が認められる現象に注目し、このmiRNAに焦点をあてた。ヒト肝癌由来HuH-7細胞またはHepG2細胞にmiR-24を過剰発現させた時、内因性のARNT蛋白質発現量の低下が認められた。ARNT mRNA発現量には変化が認められなかったことから、miR-24は翻訳抑制によりARNT発現を負に制御していることが示された。AhRのリガンドである3-メチルコラントレン処置により標的遺伝子であるCYP1A1 mRNAの顕著な誘導が認められたが、miR-24の過剰発現によりその誘導は完全に消失した。さらにHIF-1αの分解を抑制して蓄積を高めるデフェロキサミンの処置によりHIF-1αの下流遺伝子である炭酸脱水酵素IXm RNAの誘導能もmiR-24の過剰発現により顕著に抑制された。複数検体のヒト肝試料において、ARNTタンパク質とmRNA発現量の間に正の相関が認められなかったことから、転写後調節の関与が支持された。ARNTタンパク質発現量はmiR-24発現量と有意な負の相関関係を示した。以上より、ヒト肝臓におけるARNTの発現制御にmiR-24が働いており、異物応答関連因子の発現量に個人差をもたらす原因となっていることを明らかにした。
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