研究課題
高尿酸血症は痛風に加えて慢性腎疾患や心血管系疾患の危険因子となるため、尿酸値管理が重要である。血清尿酸値は、遺伝的原因の他に外来的な因子により変動する。特に、食品中成分や疾病治療に利用される医薬品の中には副作用として、尿酸動態を変動させ、血清尿酸値を上昇させるものがあるが、その評価を行うことはむずかしい。尿酸動態はヒトとラットなどの動物とは異なるため、ヒトでの調節因子を明確にし、その評価系を樹立することが望まれる。そこで本研究では、ヒト腎臓において尿酸の再吸収に働く輸送体のin vitro評価系の樹立を試みた。ヒト尿酸再吸収に対して尿細管上皮細胞管腔側膜(管腔側)で機能するURAT1と側底膜側(血液側)で機能するURATv1の両者を同時に発現する培養細胞株を作製し、管腔側から血液側への移行を測定した。その結果、両輸送体を極性を有した状態で発現するMDCK細胞(UUv)では、管腔側から血液側に相当する部位へのMDCK細胞を介した経細胞輸送が観測された。しかし、URAT1のみあるいはURATv1のみを発現させた細胞ではそのような管腔側から血液側への移行は観測されず、いれも発現しないMock細胞と同程度であった。即ち、両輸送体が連携して再吸収を担うことが明らかになった。一方、尿酸再吸収阻害によって尿酸値低下を引き起こす医薬品であるベンズブロマロンやロサルタンでは、再吸収に相当する経細胞輸送の低下が再現できた。また、尿酸再吸収促進作用を持つPZAでは経細胞輸送の促進が観測された。以上の結果より、本評価系は、医薬品による尿酸再吸収評価系として利用できることが示された。以上、in vivoならびにin vitro実験系による尿酸値変動評価・予測系の樹立に一部成功し、さらにin vitro系については、他の医薬品や食品成分の影響などからその有用性を検討中である。
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