研究概要 |
細胞膜にはラフト、カベオラなどの脂質ドメインが存在し、膜蛋白質の二次元的分布や機能の制御に関与することが知られている。我々は膜脂質の二次元的分布をナノレベルで観察・定量するための顕微鏡法(急速凍結・凍結割断レプリカ標識法[QF-FRL法])を開発し、培養細胞の細胞膜におけるガングリオシドGM1, GM3やフォスファチジルイノシトール4,5-二燐酸(PI(4,5)P2)の分布を詳細に解析してきた。本年度はさらにQF-FRL法の適用範囲を拡張する目的で、1)動物の体内組織に存在する細胞の解析に用いることができるように方法を改良する、2)他の膜脂質を特異的に標識することができるプローブを開発し,適用可能性について検討する、3)遺伝子機能との相関を系統的に解析するために、変異体ライブラリーが完備している酵母細胞への応用方法を創出する、の3点について研究を進めた。その結果、1)動物体内組織を加圧凍結し、得られた凍結割断レプリカを蛋白質分解酵素とDNaseIで消化することによって、細胞膜だけでなく、細胞内オルガネラの同定と標識が可能になった。2)新たに複数の膜燐脂質について、リポソームの凍結割断レプリカと特異的に結合するプローブを得た。3)酵母を加圧凍結し、凍結割断レプリカ上で細胞壁を消化、除去することによって、良好な形態と標識を得ることができた。これらの方法を用いることによって、in vivo, in vitroを問わず、多くの膜脂質のナノ局在を定量的に解析することが可能になった。次年度は、これらの方法を用いて、種々の条件が膜脂質分布に及ぼす影響を解析する予定である。
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