アルファークロトー遺伝子はリンやカルシウムなど電解質の恒常性維持に深く関わっている。この遺伝子群は糖分解酵素群遺伝子と高い構造相同性を保っているが、アルファークロトータンパク質の分子的な機能や、その構造的な意義はこれまでほとんど分かっていなかった。アルファークロトーが糖認識タンパク質として機能するのではないかとの着想にもとづいて、その結合分子であるナトリウムポンプや線維芽細胞増殖因子の糖鎖修飾の解析を行なった。 本研究の目的である「アルファークロトーが認識する糖鎖の構造を明らかにする」部分について、その糖鎖は線維芽細胞増殖因子の178番目のスレオニン残基に付加されていることが強く示唆された。その糖鎖の具体的な構造は、一つの硫酸基を持つウロン酸とアセチル化されたヘキソースアミンからなることが質量分析の結果から分かった。また、アルファークロトーはエストロングルクロン酸のグルクロン酸部分に選択的に結合し得ることを示した。 本研究の「研究実施計画」にあるように、アルファークロトーが結合を示す二糖の分離に成功した。約1ミリグラムの精製された線維芽細胞増殖因子から、ヒドラジンを用いてO型糖鎖を分離することができた。ついで、これらのO型糖鎖を精製することで、アルファークロトーが結合する糖鎖の構造を同定する道筋が開かれた。 アルファークロトーが結合する糖鎖の構造が分かれば、その機能を人為的に調整することができる。つまり、アルファークロトーの機能の変化を原因とする疾患に対する新たな治療戦略を創出できることとなる。
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