研究課題
アルファークロトー遺伝子はリンやカルシウムなど電解質の恒常性維持に深く関わっている。この遺伝子群は糖分解酵素群遺伝子と高い構造相同性を保っている。アルファークロトータンパク質が認識する糖鎖は線維芽細胞増殖因子(FGF23)の178番目のスレオニン残基に付加されていることが、FGF23び糖鎖修飾部位の変異実験の結果、強く示唆された。その糖鎖の具体的な構造は、一つの硫酸基を持つウロン酸とアセチル化されたヘキソースアミンからなることが質量分析の結果から分かった。本年度は、その結合分子であるナトリウムポンプや線維芽細胞増殖因子の糖鎖修飾の解析を多面的に行なった。次に、アルファークロトーが結合を示す二糖の分離に成功した。約1ミリグラムの精製された線維芽細胞増殖因子から、ヒドラジンを用いて0型糖鎖を分離することができた。ついで、これらの0型糖鎖を精製した。この糖構造はアルファークロトーが認識する対象そのものであり、アルファークロトーが複数の相手分子、すなわちNaポンプとFGF23を始めとする生理活性因子と糖を介して結合解離する原理が解明できたと考える。さらなる問題としては、クロトーの構造予測から示唆されるように、認識標的であるグルクロン酸が硫酸化されている可能性が高いが、その部位を特定する事はMSでは困難であるということであった。これを解決するために、2位、3位に硫酸化したグルクロン酸標品を作成し、クロトーとの結合解離特性を計量比較することで、硫酸化部位を特定し、原子レベルでの認識構造を決定した。これにより、本研究課題であるクロトー分子が認識する糖鎖構造の解析は達成できたと考えている。
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