研究課題
基盤研究(B)
ベータクロトーはおもに肝臓の肝細胞で発現している、グリコシダーゼ様ドメインを二つ持つI型の膜タンパク質である。アルファークロトーとともにクロトーファミリーに属する。胆汁酸合成の制御をとおした脂質の取り込み量の調整など、広くエネルギー代謝に関わる内分泌性タンパク質(ホルモン)のひとつとして、線維芽細胞増殖因子(FGF)-19が同定された。このFGF-19は小腸(より胃から遠い回腸末端部に発現が多い)の上皮細胞に発現しており、門脈中を循環して肝細胞にシグナルを受け渡す。そのシグナルを伝えるために、ベータクロトーを必要とする。ベータクロトータンパク質はアルファークロトータンパク質同様に、糖鎖を認識するレクチン構造をもつ(糖結合タンパク質のことレクチンとよぶ)。そのため、その認識する糖鎖構造がFGF19にもあるものと考え、これまで研究を進めてきた。本研究課題において、特殊糖鎖特異的抗体を用いることで、ベータクロトーが特異的に認識する糖鎖構造を見出すことに成功した。この発見は、クロトーファミリータンパク質がレクチンとしてどのように、FGFシグナルを伝えるのかの理解につながった。それだけでなく、アルファークロトーはナトリウムカリウムポンプ複合体との結合にも、同様の糖結合機構を使っていることが分かった。つまり、ひとつのタンパク質が、どのようにして複数の分子(FGFファミリーとナトリウムカリウムポンプ)と相互作用するのかについて、合理的に理解することができた。本課題での発見は今後、ナトリウムカリウムポンプ複合体のような生理分子がどのように細胞膜表面まで調節的に運ばれるか、という生理学上の未解決な問題を解く糸口となる。つまり、糖転移酵素による糖鎖修飾の制御が、生理分子の輸送を調節していることがわかった。この成果をもとに、糖鎖の生物学的な意義を解明する研究が広く行われることになると期待される。
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