研究概要 |
哺乳動物の生物時計が局在する視床下部視交叉上核(SCN)は、多数の概日振動細胞により構成されるが、システムとしての生物時計機能は未だ不明である。本研究は、時計遺伝子Per1,Pert2発現を生物発光にてin vivo,ex vivoで計測し、SCN内の部位特異的振動体の局在と機能と出力を含めたシステムとしての生物時計のシステムを明らかにすることを目的とする。平成22年度は以下の研究を行い、所定の成果を得た。 1.SCNを構成する多振動体のEx vivo解析 SCNをスライス培養し、Per1およびPer2発現リズムを一細胞レベルの発光解析にて、細胞内Ca2+レベルをCa2+センサープローブを用いたFRET解析にて、膜電位を多電極ディッシュ法にて計測することに成功した。さらに、日長をコードする2振動体は、Per1発現と一致することから、時計遺伝子間でPer1が関与する振動機構とPer2が関与する機構とが異なることを示唆した。 2.光ファイバーを用いたSCNにおけるin vivo遺伝子発現解析 SCNの中枢振動体が行動リズムを駆動する時計機構を検討する目的で、光ファイバーシステムを構築し、SCNからの発光リズムを約30日にわたり連続計測することに成功した。また、光パルスによる行動リズムと同様に移行期をもつ発光リズムの変位を、SCNから直接計測し、SCN内にも移行期を示すサブ振動体が存在することが明らかとなった。 3.SCN内各振動体の出力経路と各振動体が支配する末梢時計 2台のCCDカメラのステレオ撮像により、覚醒動物から連続的に生物発光を記録するシステムを構築し、無麻酔で発光リズムを体表から計測することに成功した。今後、光パルスによる中枢時計と、脳内各部位の時計の変位を同一マウスで連続的に解析することが可能となった。
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