研究課題
約24時間周期の概日リズム(circadian rhythm)は、24時間で自転する地球環境に適応すべく生命が獲得した生理現象と考えられ、バクテリアからヒトに至るまでほぼすべての生物にそなわる基本的生命現象である。生命の諸現象は、このリズムを発振する生物時計(biological clock)の支配下にあって、互いに一定の時間関係を保っている。本研究は、特に光、食事やストレス等の環境との関連に焦点をあてて、分子から細胞、組織、そして個体レベルに至るまで、ほ乳類の概日リズムの機構を統合的に明らかにしようとするものである。本年度は、Bmal1-Elucトランスジェニックマウスを用いて、哺乳類の中枢時計である視交叉上核(suprachiasmatic nulces, SCN)におけるリズム発振機構に関して解析を行った。概日時計のポジティブフィードバックコンポーネントであるBmal1発現における振動の周期は、行動リズムの周期と一致しており、SCN内ではクラスターを形成した。薬理学的及び物理的な伝達阻害においてもSCN内の局所部位特異的な振動に変化はなかった。コンピュータシミュレーションによる解析もあわせると、細胞間のカップリングはBmal1遺伝子発現振動に強く影響を及ぼすことはなく、SCN内の細胞間カップリングは従来想定されていた以上に複雑なものであることを明らかにした。さらに部位特異的な周期は光環境によって制御されえることを発見した。これらのことから、概日リズムの周期がSCNにみられる季節性変動の基礎となっていることが示唆される。
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J.Biological Regulators & Homeostatic Agents
巻: (in press)
Mol.Biol.Cell
巻: 22 ページ: 3541-3549
10.1091/mbc.E11-02-0139